【読書】職業としての風俗嬢

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2025年7月24日08:36:05

司法書士と風俗店

今日、読み終えた本は、「職業としての風俗嬢 (宝島社新書)」。

 

職業としての風俗嬢

職業としての風俗嬢 (宝島社新書)

 

司法書士は、会社組織になっている(これからなる)風俗店とは、会社の登記手続きを通して関わることがあります。

(ちなみに、風俗店を開業した場合の所轄の警察への「性風俗特殊営業開始届書」等の提出は、司法書士ではなく行政書士の仕事です。) 

先日、ある会社(風俗店)の定款の目的を変更する登記手続きの依頼をいただいて行ってきたのですが、仕事以外の点で緊張の連続でした…。

 【定款変更】風俗業を始めるため、会社の目的変更

 

ですが、風俗嬢個人とは、風俗嬢が会社組織にしない限り、まず関わることはまずありません(風俗嬢が法人化することはあるのでしょうか…?)。

この本の帯には、「風俗嬢は税金をおさめなくていい」と書かれているのですが、今後、何らかの形で税金を納めるようになった場合、節税のために会社組織にするケースもあるかもしれないと思い、この本を読んでみました。

 

 

この本、「職業としての風俗嬢 (宝島社新書)」は、風俗店ではなく、職業としての風俗嬢、とりわけ、なぜ風俗嬢は税金を納めなくていいのか?という点に着目して書かれた本です。

著者は、年商10億円の風俗チェーンオーナーと、業界を熟知したノンフィクション作家で、元国税局の調査官の見解も加わり、リアルな情報が満載です。 

目次―

第1章 風俗嬢の九割は税金を納めていない
第2章 元国税庁調査官が明かす「風俗嬢と税」の問題
第3章 拡大する風俗嬢の格差
第4章 稼げる女、稼げない女
第5章 風俗店の経営はどれほど儲かるのか
第6章 日本と世界の性風俗はどう違うのか

 

 

風俗嬢は個人事業主

著者の試算によると、全国に約35万人いるという風俗嬢ですが、まず、風俗嬢は風俗店の従業員ではなく、個人事業主だということに驚きました。

風俗店は、個人事業主である風俗嬢に仕事をする場所を貸し、客を斡旋する紹介業という立場であり、これはタレントと芸能事務所との関係に似ているのだそう。

そして、35万人もいるという風俗嬢の九割が所得税や住民税を納めておらず、確定申告して正しく税金を納めている子は皆無だというから、もっと驚きました。

「源泉徴収」にまつわる問題もややこしく…司法書士の場合には司法書士報酬は源泉徴収されると明確に決められているのですが、風俗嬢についてはその規定がないらしい(税理士によって解釈が異なるらしい)。

税金を納めなくていいなんて、うらやましいと思うのですが、良いことばかりでもないようで、子どもを保育園に入れる際の収入証明がないし、クレジットカードは作れない、ローンも組めず、不便なことだらけだといいます。

 

 

国税は風俗嬢から税金を取る気はない?

以前、浅草で国税調査官をされていたという税理士のW先生によると、国税側は当然、風俗嬢は稼いでいることを知っていながら、税金をとる気がないらしい。

国税が税金を取るために白黒をつけようとすると、税の仕組み以前に、商売の仕組みに踏み込まなければならず、踏み込もうとすると、売春防止法などの壁があり…そこから先は警察の範疇のため、踏み込めないのだそうです。

国税と警察は昔から仲が悪いとか。

なので、国税は最初から風俗嬢から税金をとる気がない、もっといえばとらないと決めているという話です。

これは税理士W先生の個人的な見解だからそれが正しいとはいえませんが、なるほどそういうことか、と。

 

 

店舗型から無店舗型へ移行した結果、風俗街がなくなって。。。

2000年代半ばに、都条例などで、「店舗型風俗店」の新規参入が禁止されたり、「風適法」が大幅に改正された結果、風俗業界は激変したといいます。

店舗型というのは、風俗街の存在を前提にしたビジネスで、風俗街に風俗サービスを求める客が自然に集まるから成り立っているのであり、店舗型がなくなるとフリーの客がいなくなってしまうのだそうです。

だから、待ちの営業をしていたのでは客足が途絶えます。

(新規参入できないということは、現存のお店はそのまま営業できるということだから、店舗型がなくなるとか、風俗街が消えるというのがイマイチ理解できません…)

そのため、お店側が客を呼び込む手段は宣伝しかなくなり、インターネットが活用されるようになったのだそうです。

個人事業主の風俗嬢も、かつてのように有名店に入店すれば客がついた時代ではないため、自らSNSなどを活用して個性をアピールするようになったとか。

その点は、昔は法務局の前に事務所を置けば仕事が舞い込んできたという司法書士の世界と似ているような、似ていないような…

 

 

日本と世界の性風俗の違いについて

最後に、おもしろいなと思ったのが、日本と世界の性風俗の違いについて書かれているところ。

西洋における売春は、女性を「奴隷」として管理したことから始まっているそうですが、日本では、「芸」や「遊興」の一つとして始まってており、根本的に違うらしい。

さらには、性にも「粋」や「遊び心」を持込むのは日本人だけであり、その結果、性風俗のジャンルが果てしなく広がってしまうのだとか。

ここには書けませんが、えっ?そんなジャンルが成立するの?というマニアックな専門店もあるようです。

 

 

 

風俗嬢が個人事業主であり、税金を納めていない点は驚きました。

また、風俗嬢が客を取り込むテクニックとして、ブログ、ツイッター等のSNSを駆使している点は、司法書士の集客を考える上でとても参考になりました。

なかなかおもしろい本でした。 

 

 

 

 

昼間は、司法書士として、会社登記や相続登記など登記手続きの代行をしています。

会社設立・不動産の相続登記 西尾司法書士事務所(東京 中野)