TOPページ > 会社名(商号)を決める際の発音の注意点
聞き取りにくい社名は損失を生む?「顧客の心理」から考える商号選びの盲点
会社を立ち上げる際、多くの起業家が社名(商号)の「意味」や「文字の並び」にこだわります。
しかし、司法書士として多くの設立登記をお手伝いしてきた経験からお伝えすると、それと同じくらい重要なのが「音(響き)」です。
人間は、一度で聞き取りやすく、発音しやすい言葉に対して、無意識のうちに「安心感」や「好印象」を抱く傾向があるといいます。
逆に、聞き取りにくい名前は、それだけで相手に小さなストレスや違和感を与えてしまうことがあるのです。
株式会社の設立登記をお手伝いさせていただいたお客さまから、1年が経過した頃にこのようなご相談をいただきました。
「商号変更(社名変更)をしたいのですが……」
その決断の裏には、登記をして実際に動かしてみなければ分からなかった、意外な盲点がありました。
1年目の誤算:電話越しで伝わらないストレス
その会社は、イタリア語のような美しい響きを持つ「○○ッソ」という商号で、通信販売などの事業をスタートさせました。
しかし、日々の業務を重ねるうちに、ある問題に直面します。
「活動を始めて初めて気づいたのですが、自分が考えていなかった部分でした。電話では末尾の『ソ』や、詰まる音(っ)が非常に聞き取りにくいことが判明したのです」
電話でのやり取りにおいて、社名を何度も聞き返されることは、想像以上にビジネスのテンポを損ないます。
顧客に「えっ?何という会社ですか?」と聞き返させてしまう負担は、信頼関係を築く上での小さなノイズになりかねません。
このままではいけない、ということで、その会社は設立から1年で商号変更の手続きを行うことになりました。
「自分のこだわり」と「顧客の受け取り方」
自分の会社ですから、愛着のある名前にしたいという気持ちはとてもよく分かります。
しかし、顧客が発音しにくかったり、一度で覚えにくかったりする名前は、せっかくのビジネスチャンスを遠ざけてしまう原因になり得ます。
実は、私自身にも似たような経験があります。
司法書士事務所を開業する際、私は最初から会社設立や相続などの登記業務を中心にするつもりでしたので、「登記屋」というストレートな事務所名を考えていました。
そのほうが、一目で何をしているかが伝わりやすいと考えたからです。
しかし、周囲から猛反対を受け、最終的には現在の「西尾努司法書士事務所」という、堅実で信頼感を得られやすい名前に落ち着きました(今でも、「登記屋」のほうが分かりやすかったのでは、と思う瞬間はありますが……)。
登記申請の前に、必ず「声」に出してテストを
社名は一度登記してしまうと、変更する際に対外的な説明が必要になるだけでなく、登録免許税や各種変更手続きの手間といったコストも発生します。
商号を決める際は、文字を見るだけでなく、ぜひ次のことを試してみてください。
- 実際に何度も声に出して発音してみる
- 電話口を想定して、少し早口で言ってもスムーズに伝わるか確認する
- 知人などに口頭で伝え、一発で正確に復唱できるかを試す
顧客にストレスなく覚えてもらい、長く愛される会社にするため、手続きを進める前に、ぜひ「聞き取りやすさ」という視点からも社名を点検してみることをおすすめします。
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