[ テーマ: 役員変更手続き ]
2026年9月3日12:27:00
2020年3月5日作成
2026年9月3日更新
株式会社の役員変更登記のご依頼をいただきました。
お話を伺うと、
「取締役は4名いて、そのうち代表取締役ではない取締役1名が退任する」
ということでした。
そこで、取締役の退任登記に必要な書類を作成するため、まず会社の登記内容を確認しました。
ところが、登記簿に取締役として登記されていたのは、4名ではなく3名でした。
依頼者の認識と登記の内容が違っていたわけです。
このまま取締役1名が退任すると、取締役が2名になってしまいます。
会社法では、取締役会設置会社の取締役は3名以上でなければならないとされています(会社法第331条第5項)。
したがって、現在の取締役が3名しかいない会社で、そのうち1名が退任すると、残る取締役は2名となります。
そのため、「1名が退任するから、その人の退任登記だけをすればよい」という単純な話にはなりません。
退任後も会社が取締役会設置会社のままであるなら、取締役3名以上という状態を確保する必要があります。
今回のようなケースでは、会社としてどのように対応するかを検討する必要があります。
大きく考えると、次のような方法があります。
どちらを選ぶかによって、必要となる手続や登録免許税が大きく変わる場合があります。
新たに取締役1名を選任すれば、取締役は3名となります。
この場合、取締役の退任と新しい取締役の就任について変更登記を行います。
登録免許税は、取締役などの役員変更登記について、資本金1億円以下の会社であれば1万円(1億円超の会社であれば3万円)です。
なお、同じ申請書で複数の役員について変更登記をする場合でも、役員変更登記についての登録免許税が人数分加算されるわけではありません。
そのため、今回のように「取締役1名の退任+取締役1名の就任」というケースでは、原則として役員変更登記の登録免許税は1万円(資本金1億円超の場合は3万円)となります。
もう一つの方法は、取締役会を廃止する方法です。
取締役会を廃止すれば、会社法上、取締役を3名以上置かなければならないという制限はなくなります。
そのため、取締役会を廃止した上で、取締役1名を退任させ、取締役2名以下の会社とすることも可能です。
ただし、取締役会を廃止する場合には、単に「取締役会を廃止する」というだけでは済まないことがあります。
たとえば、定款で「株式の譲渡による取得については取締役会の承認を要する」と定めている会社では、取締役会廃止に伴って、その承認機関を変更するための定款変更が必要です。
この場合には、次のような登録免許税が発生することがあります。
・取締役会に関する事項の変更 3万円
・取締役の退任 1万円(資本金1億円超の場合は3万円)
・株式の譲渡制限に関する規定の変更 3万円
したがって、すべて該当するケースでは、登録免許税の合計が7万円(資本金1億円超の場合は9万円)となります。
もっとも、株式の譲渡制限に関する規定の内容は会社ごとに異なりますので、取締役会を廃止すれば必ず7万円になる、という意味ではありません。
また、取締役会廃止に伴って、代表取締役の選定方法などについて定款の確認も必要になります。
今回の会社では、登記簿上の取締役が3名でした。
そのうち1名が退任すると2名になってしまうため、取締役会設置会社のままにするのであれば、別の1名を取締役に選任する必要があります。
一方、取締役会を廃止する方法を選べば、新しい取締役を選任する必要はありません。
しかし、取締役会の廃止や定款変更などが必要になるため、登録免許税だけを比較すると、今回のケースでは取締役を1名追加する方法の方がかなり安くなります。
そこで、今回の依頼者には、それぞれの方法に必要となる手続と登録免許税を説明しました。
その結果、今回は、新たに取締役を1名選任し、取締役3名の状態を維持する方向で調整することになりました。
ここで注意が必要なのが、新しい取締役を選任すれば、それだけで手続が完了するわけではないという点です。
取締役に選任された本人が就任を承諾する必要があります。
本人に就任する意思がなければ、当然ながら取締役に就任させることはできません。
今回のように、会社側では「この人を取締役にすればよい」と考えていても、本人の意思確認が必要になるケースがあります。
新しく取締役を選任する場合には、その取締役の任期についても定款を確認する必要があります。
会社法上、取締役の任期は原則として、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。
ただし、非公開会社では、定款の定めによって取締役の任期を最長10年まで伸長することができます(会社法第332条)。
また、定款に、
「補欠又は増員により選任した取締役の任期は、他の現任取締役の任期の満了すべき時までとする」
などの規定が置かれている会社もあります。
このような定めがある場合には、新しく選任した取締役の任期が他の取締役と同じ時期に終了することになります。
ただし、「補欠」なのか「増員」なのか、また定款がどのような文言になっているのかによって確認が必要です。
今回のようなケースでは、単に会社法だけを見るのではなく、会社の登記簿と定款の両方を確認することが重要です。
取締役1名の退任だからといって、すぐに退任登記の書類を作り始めるのではなく、まず現在の役員構成を登記簿で確認することが大切です。
特に、会社の担当者が認識している役員と、実際に登記されている役員が一致していないことがあります。
今回のように、「取締役4名のうち1名が退任する」と思っていたところ、実際には、「登記されている取締役は3名で、そのうち1名が退任する」ということもあります。
取締役会設置会社では、取締役が3名以上必要です。
そのため、取締役1名の退任によって取締役が2名になってしまう場合には、
・新しい取締役を選任する
・取締役会を廃止する
など、会社の今後の運営方法を含めて検討する必要があります。
そして、どちらの方法を選択するかによって、手続の内容だけでなく、登録免許税や司法書士報酬などの登記費用も変わってきます。
役員変更登記をご依頼いただいた際には、登記簿だけでなく定款も確認し、費用面も合わせてその会社にとってどの方法が適切なのかを一緒に検討することが重要だと考えています。
取締役会設置会社の取締役が1名退任し、取締役が2名になってしまう場合には、そのまま取締役会設置会社として運営することはできません。
そのため、
・新しい取締役を選任して3名以上にする
・取締役会を廃止して機関設計を変更する
といった対応を検討する必要があります。
どちらを選ぶべきかは、登録免許税だけでなく、今後の会社運営、定款の内容、代表取締役の選定方法なども含めて判断することが大切です。
なお、役員変更の登記は、原則として変更が生じた日から2週間以内に申請する必要があります。
執筆:司法書士 西尾努
(※本記事は一般向けの解説です)
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