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西尾 努2007年2月より(株式・合同)会社設立・役員変更・定款変更、相続登記等、登記業務を中心に行っています。

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代表者住所の非表示措置、法務省データに見る利用状況と今後の課題

2026年10月5日17:30:00

【2026年最新動向】代表者住所の非表示措置、法務省データに見る利用状況と今後の課題

 

2024年10月1日に施行された「代表取締役等住所非表示措置」ですが、施行から2年が経過しました。

最近、民間の登記支援事業者が公表した利用調査結果を大手新聞社等のメディアが取り上げたことで、改めてこの制度への関心が高まっていようです。

今回は、一つのニュースの数字だけにとらわれず、法務省が発表している公式データをもとに現在の利用実態と、2026年に入ってから大きく動き始めた制度改正の方向性、実務上の留意点について考えてみることにします。

 

代表取締役の住所非表示
代表取締役の住所が非表示とすることができます

 

1.公式データ(法務省)に見る利用状況の推移

特定の民間サービスのデータではなく、法務省が公表している「代表取締役等住所非表示措置の申出による実施件数」を見ると、利用件数は以下のように推移しています。

施行1年時点(2025年10月) : 累積13,996件(約1.4万件)

2026年6月時点 : 累積23,098件(約2.3万件)

法務省の公式を見ても、利用件数は着実に積み上がっています。

制度の利用が始まってから2年足らずで累積2万件を超えていることからも、代表者の住所を公開することによるプライバシー上の不安を感じている会社が少なくないことがうかがえます。

なお、申出のタイミングを見ると、会社設立時だけでなく、設立後の役員変更や本店移転等の登記に合わせて利用されるケースもあります。

 

2.合同会社など「対象拡大」に向けた動き

現在、実務上・報道等で特に注目されているのが、代表者住所の非表示措置の対象拡大です。

現行制度は、株式会社の代表取締役、代表執行役、代表清算人を対象とした制度であり、合同会社の代表社員などは対象となっていません。

ですが、2026年7月、法務省から商業登記規則等の改正に関する省令案が公表され、制度の対象を大きく広げる方向が示されました。

省令案では、合同会社を含むすべての会社や、会社以外の法人等についても、代表者等の住所を非表示とすることができるようにする方向が示されています。

この改正についてはパブリックコメントも実施されており、2026年12月の施行が予定されています。

したがって、現在はまだ株式会社以外の法人について現行制度を利用することはできませんが、今後は合同会社の代表社員などについても住所非表示の対象となることが見込まれます。

※制度の基礎概要や現在の申請要件については、以前の記事「代表取締役の住所非表示、実際どのくらい利用されている?」で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

 

3.登記実務における注意点

利用件数が増える一方で、登記申請にあたっては以下の点に留意が必要です。

一度登記された住所は消えない

非表示措置が適用されるのは、原則として申出と併せて申請される登記によって記録される住所です。

そのため、現在の代表取締役の住所を非表示にしたとしても、過去の登記記録や閉鎖された登記記録に記載された住所まで遡って消去されるわけではありません。

この点については、2026年の制度改正をめぐっても、過去の登記に記録された住所についても非表示の対象とすべきではないかという意見が出ているようです。

 

融資・取引時の対応

代表者の住所が非表示となった場合、登記事項証明書には代表者の住所について最小行政区画(市区町村等)までが記載されることになります(写真の事例だと、「墨田区」まで)。

そのため、銀行での口座開設や融資、不動産取引などの場面では、代表者の住所を確認するため、住民票や印鑑証明書などの追加書類の提出を求められることがあります。

住所非表示措置はプライバシー保護というメリットがある一方で、会社の取引先や金融機関などが代表者の住所を確認する際に、追加の確認作業が必要となる場合があります。

 

添付書類の確認が必要

非表示措置を利用する場合、通常の登記書類に加えて、

  • 会社の本店所在場所における実在性を証する書面
  • 代表取締役等の住所を証する書面
  • 実質的支配者の本人特定事項を証する書面

などが必要となります。

ただし、すでに代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合など、一定の場合には添付書類が一部省略できるケースもあります。

 

まとめ

代表者住所の非表示措置は、経営者のプライバシーや安全を守る上で有効な選択肢です。

制度開始から2年足らずで利用件数が2万件を超え、利用は着実に広がっています。

さらに、2026年には、合同会社を含むすべての会社や、会社以外の法人等へ対象を広げる方向で制度改正が進められています。

一方で、現在の制度では過去に登記された住所までは非表示にならないことや、金融機関等との取引において追加書類が必要となる場合があるなど、注意すべき点もあります。

今後、対象範囲が広がれば、代表者住所の非表示措置を利用する会社・法人はさらに増えることが予想されます。

当事務所では、会社設立や役員変更・本店移転登記の際、住所非表示措置の適用要件や添付書類のチェック、実務上のメリット・デメリットを踏まえた登記申請をご案内しております。お気軽にご相談ください。

 

法定根拠・参照

商業登記規則第31条の3(代表取締役等住所非表示措置)
商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号)
法務省「代表取締役等住所非表示措置について」
法務省「代表取締役等住所非表示措置の申出による実施件数」

 

(参照)
 代表者の住所が登記簿に出なくなる?