[ テーマ: 不動産の所有権移転 ]
2019年1月29日14:55:00
昨年、あの積水ハウスが、前代未聞の不動産詐欺に遭い、巨額の不動産代金を騙し取られたというニュースで世間を驚かせました。
また、昨今、地面師による不動産のなりすまし詐欺が横行し、被害件数も100件を超えるとか。
司法書士としては他人事ではないので、「地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団」を読んでみました。
そこには、巧妙な手口が紹介されており、司法書士もそのような研修を受けたりはするのですが、それをはるかに超える手口が使われていることに驚きました。
・会社の社名変更登記を利用したり、
・パスポートや印鑑証明書の偽造の技術の進化がスゴいことになっていたり、
・偽造した身分証明書を利用して役所でホンモノの証明書を取得したり、
・なりすましの演技指導をする教育係がいたり、
・取り引きの際には、指の腹にマニキュアを塗り書類に指紋を残さないようにしていたり、
・地面師とタッグを組む弁護士等の専門家が存在していたり、
とくに驚いたのは、偽造の精度が高まり、最近の地面師は不動産取引に必要な書類は偽造というより、同じ物をつくれるところまで来ているということ。
3Dプリンターを使って実印まで作ってしまうというから司法書士もだまされてしまうのも無理はないと…
ですが、そういう巧妙な手口でなりすましをしたとしても、
・ある不動産会社の営業マンなりすました人物とエレベータに乗り合わせたときにした何気ない会話がきっかけで怪しいと気づいたり、
・本人確認の際、生まれ年の干支を間違えたり、
・パスポートと印鑑証明書の生年月日が異なっていたり、
・中国政府発行の旅券記載の氏名表記が誤っていたり、
・印鑑証明書記載の外国籍の者の生年月日が西暦でなかったり、
・印鑑証明書記載の住所が不完全だったり、
と、ちょっとしたことでなりすましを見破る機会があるということも司法書士会などの研修でもおなじみですが、この本を読んで再確認しました。
おかしいと思っても、単なる錯誤だとやり過ごしてしまいがちですが、取り引きの場ではもっともっと神経を研ぎ澄ませて臨まないと大変なことになります。
不動産取引の場のあの緊張感…周囲のプレッシャーを感じながら本人確認をするのですが、この事件が話題になったおかげで、この事件を例に挙げて、周囲のプレッシャーを跳ね除けて確認作業に集中することができそうです。
この本、「地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団」の帯には、「全国の不動産関係者、銀行員、デベロッパー社員、弁護士、司法書士、必読の書」と書かれていましたが、大げさではなかったな、と。
こちら側も相手の手口を知り、研鑽を積んで事故が起きないように心がけたいと思います。
その後…
「3Dプリンターで、実印を作る」という話が強烈に印象に残りすぎて、
「3Dプリンターで世界はどう変わるのか (宝島社新書)」という本も読んでみました。
今は、3Dデータさえあれば、簡単に3Dプリンターでものが作れる時代らしい。
それでも、プリンターで出力するにはかなりの費用がかかるだろうから、実際にやるだけの費用対効果は…なんて思っていたら、
3Dデータは3Dスキャナーがあれば作ることができるし、3Dプリンターも安く手に入れることができるのだそう。
試しにAmazonで調べてみると、数万円で買うことができることを知り驚きました。
さらに調べてみると、家庭用に低価格な3Dプリンターを使って実際に印鑑を作っている人の動画サイトなどもあり、背筋が寒くなりました。
…怖い時代です。
(2019.02.13 追記)
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