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西尾 努2007年2月より(株式・合同)会社設立・役員変更・定款変更、相続登記等、登記業務を中心に行っています。

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【相続登記】相続登記が完了して10年経過し、実印が変わったと

[ テーマ: 相続登記手続き ]

2019年9月18日16:48:00

10年以上前に不動産の相続登記手続きのご依頼をいただいたお客さまから、こんな問い合わせをいただきました。

「10年以上前に相続で不動産の名義を私に変えたのですが、実印が欠けてしまった。

新しく実印の変更を考えているのですが、登記した不動産に影響がないでしょうか?」

 

…ん?? どういうこと??

 

一瞬、何を相談されているのか、把握できませんでした。

よ~くお話を聞いてみると、「相続登記の際に使用した印鑑を後に変更しても、所有権に影響がないか」

ということのようです。

 

不動産登記と実印の変更 

 

相続登記の手続きを考えてみると―

不動産の所有者に相続が発生する(=所有者が亡くなる)と、その所有権は相続人に承継されるのですが、相続人が複数いて、そのうちの一部の名義にする場合には、遺産分割協議を行って決めることになり…

協議が成立すれば、それを遺産分割協議書にして、相続人全員の署名(又は記名)の上、実印を押捺し、法務局に提出して、不動産の名義を変更(=相続登記)する流れになっています。

遺産分割協議書に押捺した実印が欠けたので変更した場合、当時作成した遺産分割協議書に押した印鑑も変えなければならないのでは?と心配になるのもわかります。

 

 

関係のある事項を1つ1つ考えてみると―

遺産分割協議は成立しており、協議書も作成済み。

(1)当時の遺産分割協議書に対して

当時、実印を押して、その印鑑が実印だという証明のため、印鑑証明書をつけていましたが、その時点で協議は成立してしているため、後から実印を変更したとしても協議書に新しい実印を押しなおして修正する必要はありません。

 

(2)現在の所有権に対して

また、登記名義人となった後に、申請時の印鑑を変えたとしても、もともと所有者名義の登記と印鑑は結びついていませんから、その後に実印を変更したとしても法務局に変更した旨を届け出る必要もありません(何もする必要はありません)。

 

(3)将来発生するご自身の相続登記に対して

その後に印鑑を変更された現所有者がお亡くなりになった場合に行う相続登記手続きでは、そもそもお亡くなりになった所有者の実印を使用する場面はありません。

 

(4)不動産を売却する場合

将来的に不動産を売却される場合、所有者の実印、印鑑証明書は必要になりますが、それは、その売買による所有権移転登記を申請する時点の実印であり、過去の印鑑の登録状況を遡って確認することはありません。

変えたら変えた時の実印を使うまでです。

 

 

時々、とんでもない方向からご質問を受けることがありますが、その都度、考えさせられますし、とても勉強になります。

ありがとうございました。

また、10年ぶりに思い出してお問い合わせいただき、ありがとうございました。

 

 

ちなみに…

もし、(不動産とは無関係な話です)会社を設立した後に、法人の実印(=代表印、法人印、法務局届出印)が欠けて変更したいという場合はどうすればいいか、ということですが、

法人の実印を変更する場合には、管轄法務局に印鑑の変更(改印)手続きを行います。

届出先は法務局、市区町村役場ではありません。

その際には、代表取締役の個人の印鑑証明書の添付が必要になりますのでご注意を。

もちろん、その印鑑証明書の印鑑は、代表取締役になった際に法務局に提出した印鑑証明書の実印である必要はなく…これでは、かえって混乱しますね(笑)

 

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