[ テーマ: 役員変更手続き ]
2026年9月1日11:22:11
代表取締役の住所非表示、実際どのくらい利用されている?
2024年(令和6年)10月から、株式会社の代表取締役などについて、登記簿に記載される住所の一部を非表示にできる制度が始まりました。
正式には「代表取締役等住所非表示措置」といいます。
簡単にいうと、登記簿に記載される代表取締役等の住所について、最小行政区画(市区町村等)までを表示し、それより先の住所を非表示にできる制度です。
たとえば、東京都23区の場合、区までは表示されますが、町名・番地などは登記簿上で表示されなくなります。
(※なお、この制度の対象となるのは、株式会社の代表取締役、代表執行役、代表清算人です。有限会社、合同会社等の持分会社や、一般社団法人、NPO法人等は対象外です。)
(たとえば、「墨田区」まで記載されます)
一番大きなメリットは、代表取締役などのプライバシーを守れることです。
これまでは、会社の登記簿を取得すれば、代表取締役の住所を確認することができました。
自宅を会社の本店としている場合は、会社名と代表者の氏名から自宅の場所まで調べられてしまう可能性があります。
住所の詳細を非表示にすることで、次のような場合にメリットがあります。
一方で、注意点もあります。
登記簿だけでは代表取締役などの住所の詳細を確認できなくなるため、金融機関から融資を受ける場合などに、追加の書類を求められる可能性があります。
また、取引先等が登記簿を取得しても、代表者の住所の詳細を確認できません。
そのため、「住所を非表示にできるなら、とりあえず非表示にする」というものではなく、会社の事情を考えて利用する必要があります。
弊事務所でも、これまでにこの制度を利用した登記を3種類経験しました。
設立時だけではなく、既存の会社でも利用できます。
たとえば、代表取締役の就任や重任など、一定の登記と同時に住所非表示措置を申し出ることができます。
つまり、会社を新しく作るときだけの制度ではありません。
実務上、注意しておきたい点は―
すでに代表取締役等住所非表示措置がされていて、住所の変更を伴わない重任の登記をする場合には、住所非表示措置はそのまま継続します。
一方、住所変更を伴う重任の場合には注意が必要です。
重任の登記をする際に住所非表示措置の申出をしなければ、新しく登記される住所については非表示になりません。
また、重任の登記と同時に住所非表示措置を申し出た場合でも、過去の登記記録に表示されている住所まで、今回の住所非表示措置によって非表示になるわけではありません(過去に登記した住所は読み取ることが可能です)。
つまり、「今回の重任登記で住所を非表示にしたから、登記簿を取れば過去の住所もすべて見えなくなる」というわけではありません。
住所非表示措置を利用する場合には、過去の登記記録にどのような住所が残っているのかについても確認しておく必要があります。
制度が始まった当初は、「実際に利用する会社はそれほど多くないのでは?」と思っていました。
ところが、法務省の公表データを見ると、制度開始からの累計で2万件を超える利用があります。
設立時だけでなく、既存会社の役員変更などに伴う利用もかなり多く、すでに一定の利用実績がある制度だといえます。
弊事務所でも、設立、合同会社から株式会社への組織変更、役員変更と、異なる場面で利用する機会がありました。
制度が始まってから約2年となりますが、代表取締役の住所を守るための選択肢として、少しずつ定着してきているように感じます。
会社を設立するとき、あるいは役員変更などの登記をするときには、「代表取締役の住所を非表示にする制度があります」ということを知っておくとよいかもしれません。
利用するかどうかは、メリットとデメリットを考えたうえでご判断ください。
※代表取締役等住所非表示措置には一定の要件があり、原則として登記申請と同時に申し出る必要があります。
対象となるのは株式会社の代表取締役、代表執行役、代表清算人であり、有限会社、合同会社等の持分会社や一般社団法人等には利用できません。
また、措置が講じられた場合、登記簿に表示される住所は最小行政区画(市区町村等)までとなります。
執筆:司法書士 西尾努
(※本記事は一般向けの解説です)
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